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第2回 阿蘇
カルデラ破局噴火 低頻度だが、日本列島にいつか必ず来る巨大災害(上) 早川由紀夫
         

カルデラ陥没と火砕流

 誰も見た人はいませんが、火山の地下にはマグマだまりがあると考えられています。マグマは、岩石が高温のためにどろどろに融けた状態のものを言います。マグマはふつう地下でじっとしていますが、ときどき地表に顔を出します。これが噴火です。
 地下から大量のマグマが地表に噴き出すと、マグマだまりの天井が支えを失って下に落ち込みます。そして地表に大きな窪地がつくられます。これをカルデラといいます。
 カルデラの中には、しばしば水がたまって大きな湖ができます。北海道の屈斜路湖、支笏湖、洞爺湖、それから東北の十和田湖などがそうです。カルデラの直径はどれも10キロ〜20キロほどです。天井が陥没するためには、これくらい大きなマグマだまりが必要なようです。
 大量のマグマが一気に噴き出すときは、火口の上に噴煙の柱が高くそびえ立って、そこから軽石や火山灰が、やおら降るより、むしろ火口の縁から四周にこぼれ出すほうが手っ取り早い。そういうときは、軽石と火山灰と火山ガスからなる高温の粉体混合物が猛スピードで地表を走ります。これが火砕流です。実際どのカルデラの周囲にも、火砕流がつくった台地が何十キロも先まで広がっています。
 屈斜路湖や洞爺湖の中央部は高く盛り上がっています。これを中央火口丘といいます。中央火口丘は、マグマだまりの中に残ったマグマがカルデラ形成後に小さく何回も噴火してつくった小火山のかたまりです。

阿蘇カルデラは8万7000年前にできた

阿蘇の位置 九州中央部にある阿蘇もカルデラです。ここにもかつて湖がありました。しかし黒川と白川がカルデラの壁を破って西へ排水したため、いまは乾いて広い平原になっています。カルデラの中には三つの町と四つの村があります。そして鉄道の駅が14もあります。阿蘇は屈斜路湖に次いで日本で2番目に大きいカルデラです。阿蘇山と呼ばれるのは中央火口丘の部分です。
 阿蘇カルデラは、8万7000年前のある日に起こった阿蘇4という噴火で一昼夜のうちにできました。このときの火砕流は九州の山なみをジェットコースターのように高速で乗り越えて、鹿児島県を除く九州全県と山口県に達しました。火砕流の到達範囲内にいた旧石器人は、数時間以内に全員が焼け死んだと思われます。

北から見た阿蘇カルデラ
北から見た阿蘇カルデラ
北から見た阿蘇カルデラ

北から見た阿蘇カルデラ
直径20キロの窪みと、そこから噴出した火砕流がつくった台地。カルデラ縁の湾入は、その後の浸食作用によります。カルデラの中央には、火山錐がいくつも成長していますが、そのうち中岳がいま噴煙を上げています。それらを取り囲んで豊肥本線と南阿蘇鉄道が通っています。カルデラの中に駅が14もあります。国土地理院の数値地図50メートルメッシュ(標高)データを用いてカシミール3Dで作成しました。

カルデラ破局噴火は繰り返す

 阿蘇4火砕流に焼き払われた大地の上には、いま1100万人が住んでいます。それでは,カルデラ破局噴火は阿蘇ではもう起こらないのでしょうか?
 じつは阿蘇カルデラでは、40万年前と11万5000年前にも同様のカルデラ破局噴火が起きています。それぞれ阿蘇1、阿蘇3と名前がついています。カルデラの地下に潜むマグマだまりは火砕流を一回だけ大量に噴き出して死に絶えるのではなく、数万年あるいは数十万年の長い時間を隔ててそれを繰り返すのです。たとえば支笏湖は6万年前と4万1000年前に、十和田湖は3万年前と1万5000年前にそのような噴火を繰り返しました。<2004.01>

表 最近12万年間に日本列島で起きたカルデラ破局噴火
年代(年前) 噴火 ハザード リスク 壊滅的打撃を受けた道県
7,300 鬼界(きかい)アカホヤ 8.1
20万
27
鹿児島県
15,000 十和田八戸 6.7
200万
133
青森県・秋田県・岩手県
28,000 姶良(あいら)丹沢 8.3
300万
107
鹿児島県・宮崎県・熊本県
30,000 十和田大不動 6.7
200万
-
(十和田八戸に同じ)
40,000 屈斜路1 7
10万
3
北海道
41,000 支笏1 7.2
200万
49
北海道
60,000 支笏7-10 6.6
50万
-
(支笏1に同じ)
87,000 阿蘇4 8.4
1100万
126
鹿児島県を除く九州全県・山口県
95,000 鬼界葛原(とずらはら) 7.5
20万
-
(鬼界アカホヤに同じ)
103,000 阿多(あた) 7
300万
29
鹿児島県・宮崎県・熊本県
105,000 洞爺 7.4
200万
19
北海道
115,000 阿蘇3 7
900万
-
(阿蘇4に同じ)
117,000 屈斜路4 7.4
10万
-
(屈斜路1に同じ)
M(マグニチュード)=噴出量の常用対数
ハザード=それと同じ噴火がいま突発的に起こったら失われるだろう人命の数
リスク=ハザード/年代

(つづく)

 
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