
ハンノキは落葉広葉樹の中高木で、樹形は羽状型で浅根である。樹皮は暗紫色から灰褐色である。
樹高15メートル、直径60センチに達するが、大径のものはあまりみられない。その理由として生育場所が川に面した不安定な立地が多いからである。陽樹で、稚幼樹のころから十分な陽光が必要である。
樹木図鑑には樹種ごとに大高木(20メートル以上)、中高木(10〜20メートル)、小高木(5〜10メートル)、低木(5メートル以下で、幹と樹冠の区別が不明)の記述がある。このことは樹種別に最大の樹高がほぼ決まっているからである。
しかし、この区分は各樹種が適した環境にあればという条件が必要である。一般に樹種が同じでも、斜面位置で樹高が異なり、斜面下部で高く、斜面上部で低くなる。
その理由としては斜面上部では土壌中の水分および養分が少ないため、その結果、葉に栄養と水が不足し、光合成が十分になされないからである。
一方、幹の直径は立木密度に大きく影響される。針葉樹の人工林で、間伐がなされていない不手入れの林では立木本数が多いため、1本当たりの葉量が少ない。そのため細い木が多く、自然枯死がみられ、大きな問題になっている。山で木を観察する時は、主体となる木にとって、周囲の木は環境となることの認識が必要である。

土壌の酸素欠乏は、樹木の成長に大きな影響を及ぼす。特に地下水が高く土壌中に水が滞水(冠水)すると、土壌中に酸素が不足するため、枯死する。
滞水に対して、幹の皮目から空気を根に送る組織や不定根、萌芽を発生させ、水分の過剰な所でも生育できるように適応させている樹木がある。
ハンノキ、ヤナギ類、カツラ、ヤチダモなどは耐水性が強い。ハンノキやヤチダモは、幹から不定根を形成し、その樹皮下に通気組織を発達させている。また、ハンノキやカツラは根元から萌芽を出して個体維持を行っている。
滞水に強いマングローブ(海岸に生育している樹木の総称)は、根の上側から土壌表面に樹種特有な膝根、筍根、ペンシル根などと呼ばれる気根を出している。これらの気根は中心に細い木部があり、その周囲は厚いスポンジのような構造で、水が入らないようになっている。
耐水性の強い樹木はダム湖の周辺の緑化や河川堤防の周辺に植栽される。水位の高い所から低い条件に向かって、東北や北海道では、ハンノキ−ヤチダモ−ハルニレが分布する。

ハンノキのように荒廃地で、土地の良くない生産力の低い立地環境に対して適応性が強く、早期緑化と立地回復のためにすぐれている樹木は砂防造林樹種として選ばれている。砂防造林樹種の条件としては、やせ地、乾燥に耐えてよく活着し、病害虫に強いこと、早く成長して根系の発達もよいことなどが上げられる。
針葉樹としてはマツ類が、広葉樹としては、一般に肥料木(本シリーズのヤシャブシ参照)が使われる。肥料木としては、ハンノキ属の他にアカシア属が上げられる。これらは根に根粒菌を持っていて空中窒素を固定するため、自前で土壌改良ができるからである。
同じハンノキ属だがヤシャブシおよびヒメヤシャブシは本州以南の植物なので、北日本ではハンノキ類が砂防造林の樹木として用いられる。

ハンノキの葉は互生し、楕円形から長楕円状皮針形で、長さ5〜13センチ、ふぞろいの鋸歯縁で、側脈は7〜9対、裏面に降起し、多少弓状に曲がる。葉柄は1.5〜3.5センチ。
「アラスカで、山中で道に迷ったら、アラスカハンノキの葉を煮て食べると良いといわれている。」という記事があった。日本でよくみられるケヤマハンノキは、アラスカハンノキと形態的にほとんど同じで、生育地も似ているので、葉は食べられるのかもしれない。
雌雄同株で、花序は前年の秋にすでに枝上に出ており、開葉よりも先に開花する。雄の尾状花序は枝端付近に2〜5個ついて紫褐色を呈し、開花のときは長く垂れ下がる。雌の花序は雄花序のすぐ下から1〜5個つく。風媒花である。
ハンノキ属の共通の特徴であるが、雄花序も雌花序も芽鱗に包まれず、裸出したまま冬を越す。雌花序は球果となる。果期は10月。成熟すると長さ1.5〜2センチの木質で、松かさ状の果穂となり、翌年の春まで残る。 <2005.10> |