文:生原 喜久雄 写真:茂木 透 熊田 達夫
ミズナラは山腹上昇斜面のやや乾性の土壌に多く見られる。北海道、本州、四国および九州の暖温帯から温帯に広く分布し、高さ30メートル、直径50〜80センチに達する大高木である。 材の水分が多いことから名がつけられている。樹幹はほぼ直立し、太い枝をもつ男性的な木である。葉は互生し、縁辺にはやや大きな鋸歯(中部で最も大きい)がある。 葉はコナラに似ているが、葉柄はきわめて短く、葉は大きく、樹皮に深い縦の割目があるので、区別ができる。また、ミズナラは同じコナラ属のカシワにも似ているが、カシワの葉は厚く、裏面に灰褐色の毛が密生する。
一度に開葉する一斉型で、開葉期間も短期間である。落葉も遅い。 開花は開葉とほぼ同じ時期(5月)で、当年の10月にコナラよりも大きい堅果(ドングリ、長さ2〜2.5センチ)が成熟する(クヌギは2年)。落下したドングリは短期間に休眠が破れ、幼根を伸長させ、越冬する。 材は堅く重く、また木肌は美しく、材面は重厚な感触を与えるため、家具材ばかりでなく、あらゆる方面で広く賞用されている。Japanese oakとして、一時はフランスなどに北海道のミズナラが輸出された。
樹木は、葉で蒸散によって消費された水を、土壌→根→幹→枝→葉を通して速やかに運び、すべての葉に均等に分配する機能を獲得することによって、樹高を高くすることを可能にした。 幹での水の移動は針葉樹では仮導管で、ミズナラのような広葉樹では導管で行われている。針葉樹の幹は90%以上が仮導管から構成され、樹木を支える機能の他に水分を通道する機能を持っている。ミズナラのような広葉樹では樹木の体を支える機能は木繊維が分担し、水の運搬は導管が行う。このことからも、広葉樹の方が針葉樹よりも進化していることがわかる。
広葉樹の場合、導管の大きさや分布の特徴から環孔材と散孔材に区分する。多くの広葉樹は散孔材であるが、環孔材にはこのミズナラ、ケヤキ、ヤチダモ、シオジ、クリ、ニレなどがある。 環孔材は早材部に大きな導管(直径:0.1〜0.3ミリ)があり、年輪に沿って環状に配列する。散孔材は年輪全体にわたって同じ大きさの導管(0.02〜0.15ミリ)が一様に分布する。 環孔材と散孔材では水を移動する場所が異なり、環孔材では最近1から2年に形成された年輪巾を、散孔材では最近4から5年以内に形成され年輪巾を移動する。 樹木の場合、形成された細胞は短期間に枯死するが、水を運ぶための導管は数年間、機能する。木の大きさが同じであれば、散孔材と環孔材の樹木による蒸散量には大きな違いがないので、環孔材(最大で15〜45メートル/hr)による水の速度は散孔材の速度(1〜6メートル/hr)よりも速い。 ケヤキの樹皮は薄く、水の通路となる導管は樹皮の近くにあるため、夏では蒸散が盛んで健全な木の樹皮の温度が健全でない木よりも低いので、樹幹温度を用いてケヤキの健全度の指標が可能である。 公園などで、元気の良いケヤキと悪いケヤキの幹の冷たさを手で感じることができる(ただし、日の当たるところではわかりにくいので、日陰のところで比較する)。
天然林では、同じ樹種の群がりの程度によって大群生、中群生、小群生〜点生に区分される。明るいところで成長の優れた樹種(陽樹)のウダイカンバ、シランカンバ、ダケカンバは大群生になりやすい。一方、暗いところでも成長が可能な樹種(陰樹)のブナも大群生になりやすい。このことは、山歩きの好きな方は容易に理解される。 耐陰性の中庸な樹種(中庸樹)では、ミズナラやコナラが中群生になる。しかし、他の多くの中庸樹は小群生〜点生である。したがって、大群生や中群生になる樹種であれば、純林(同じ樹種による林)をつくりやすいが、小群生〜点生の樹種による純林を育成するためには、十分な保育が必要である。 渓流沿いの渓畔林を歩くと、いろいろな樹種がみられるのは、斜面下部の沢筋に生育する樹種の多くが小群生〜点生のためである。広葉樹を植裁して林を育成させる場合、樹木の群がり特性には十分配慮する必要がある。 九州で、同じ樹種による常緑広葉樹林がみられるのは、アカガシ、イスノキ、ウバメガシ、スダジイなどが大群生になりやすいからである。 <2003.06>
(はいばらきくお 東京農工大学 農学部教授 森林生態学)